皮膚がんのなかには、
- メラノーマ(=悪性黒色腫)
- 有棘(ゆうきょく)細胞がん
- 基底(きてい)細胞がん
の3つの種類があります。
この記事では、皮膚がんの中でもほくろと見分けがつきにくい「メラノーマ(悪性黒色腫)」についてご説明します。
ほくろとメラノーマの見分け方
ホクロかメラノーマかを見分けるときは、以下の3点をチェックしてください。
- ほくろから毛が生えているか
- ほくろが「ABCDEの法則」にあてはまっているか
- ほくろに痛みやかゆみがあるか
ほくろから毛が生えているか
ほくろがメラノーマじゃないか今すぐ簡単に調べたい!というときは、気になるほくろに毛が生えているかを見てください。
メラノーマの場合、毛が生えることはありません。
メラノーマは、皮膚の細胞が悪性化し壊れてしまっているために、毛が生えなくなります。
ほくろの毛については、「ほくろの「毛」を大調査!なぜ生える?抜いたらがんになる?」で詳しく解説しています。
「ほくろから毛が生えてない!ヤバい!やっぱ皮膚がんかも!」と思った方、ちょっと待ってください!
ホクロから生える毛は、黒くて細長い毛だけではありません。うぶ毛よりもさらに細かいような、短い白い毛が生えていることもあります。
この毛は、よ~~~く目を凝らしてみないと見落としてしまいます。
できるだけホクロに目を近づけて(ピントが合うか合わないか、くらい!)、もう一度毛が生えていないかをチェックしてみてください。
ABCDEの法則に当てはまっているか
「やっぱり毛がないかもしらん」、「ほかにも分かりやすい見分け方を知りたい!」という方にはこちら。
ほくろがメラノーマへ変わる初期症状として、「ABCDEの法則」と呼ばれる特徴が見られる、とされています。
あなたのほくろが、これらに当てはまっていないか確認してください。
A(Asymmetry):かたちが左右非対称である
B(border irregularity):はじがギザギザしている。境界がはっきり鮮明な部分と、不鮮明な部分がある。
C(Color variegation):黒褐色が多いが、色にムラがある。青・赤・白色などが混ざることもある。
D(Diameter enlargement):直径が6mm以上ある。
E(Evolving lesion):大きさ、形、色、表面の状態など症状の変化がある
(アメリカ皮膚科学会「ABCDEの法則」)
特に、「E」の、「大きさ、形、色、表面の状態など症状の変化がある」には注意が必要です。
- ほくろの色が変わった
- ほくろが急に大きくなった
- ほくろが急に盛り上がった
- ほくろがジュクジュジュしたり、しこりのようなものができた
など、最近ほくろに変化はありませんか?
これらに当てはまっているからといって、「絶対に皮膚がんだ!」という訳ではありません。
しかし、これからメラノーマに変化していく可能性がないとも言いきれません。
今後、気づいたときでいいので、ほくろに変わりはないか定期的に確認することをおすすめします。
痛みやかゆみがあるか
最後に、「ほくろがジクジク痛い」とか「ほくろがなぜかかゆい!」と、「もしかして皮膚がんかも?」と疑う人がいらっしゃるようです。
ほくろがメラノーマに変わる初期段階では、基本的に痛みやかゆみはありません。(参考:メディカルノート)
「ホクロが痛い!かゆい!」というときには、
- ほくろの下に粉瘤(ふんりゅう)ができている
- メラノーマがかなり進行している
などの可能性があります。
メラノーマはどこにできやすい?
メラノーマができやすい場所を説明する前に、「メラノーマの種類」について、少しだけ説明させてください。
ややこしいのですが、メラノーマには4つの種類があります。
この4つのなかでも、日本人が特になりやすいのが「末端黒子型(まったんこくしがた)」です。名前を覚える必要はありません。
ただ、日本人がなりやすい「末端黒子型」は、
- 足の裏
- 手のひら
- 手足の爪のなか
にできやすい、ということはぜひ覚えておいてください。
これを覚えておくことで、もしあなたの足の裏や手のひらにホクロができたときに「もしや?」と疑うことができ、早期発見につながるからです。
それでは、メラノーマの4種類について、表で簡単に説明いたします。
病型(名前) | |||
---|---|---|---|
末端黒子型(まったんこくしがた)黒色腫 | |||
表在拡大型(ひょうざいかくだいがた)黒色腫 | |||
結節型(けっせつがた)黒色腫 | |||
悪性黒子(あくせいこくし)型 |
特に、「末端黒子型」ができやすい足の裏は、なかなか見ることがないので、見逃されることも多いんです。
すでに、足の裏にほくろがある方もいらっしゃるでしょう。
もちろん足の裏にほくろがあるからと言って、すべてがメラノーマだという訳ではありません。
しかし、これから悪性化する可能性がないとは言い切れません。
思いだしたときでいいので、「足の裏にあるホクロ、色とかサイズ変わってないかな~?」と、チラッと確認するようにしてくださいね。
皮膚がん(メラノーマ)かどうかの検査について
ほくろが良性かそうでないかを、病院(皮膚科)で検査してもらうことができます。
メラノーマの検査方法は、
- ダーモスコピー検査(拡大鏡で見る)
- 皮膚生検(ひふせいけん:ほくろを切り取って顕微鏡で見る)
が使われています。
検査の流れとしては、まずダーモスコピー検査によって、医師の目で「ホクロかメラノーマか」を検査。
ダーモスコピー検査をして、悪性の可能性があるときは、皮膚生検(ほくろを切除して検査)をすることになります。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査では、患部を10倍~30倍に拡大して見ることができる「ダーモスコープ」という拡大鏡で、ほくろの色・形・模様などを確認します。
痛みは全くないので、「痛いのがこわい!」とビビることもなく、気軽に受けることができます。
「このホクロは悪性じゃないかな~?」と不安な気持ちが止まらない方は、ぜひ検査を受けてみてください。
病院によって、ダーモスコピー検査を受けられないところもありますので、診察を受ける前に確認してくださいね。
皮膚生検(切除検査)
ダーモスコピー検査をして、ほくろが悪性の可能性があるときは、皮膚生検(ホクロを切り取って、顕微鏡で詳しく調べる検査)をします。
ほくろの細胞そのものを検査にかけることで、確実に「ほくろが良性か悪性か」が分かります。
ホクロ全部を切り取って調べるものを「全切除生検」、ホクロの一部を切り取ってしらべることを「部分生検」と言います。
局所麻酔をするときの痛みはありますが、ほくろを取るのに痛みはありません。
ほくろ除去前にダーモスコピー検査を!(一応)
美容外科や皮膚科でほくろを取る前に、ダーモスコピー検査を受けることをおすすめします。
というのも、ほくろが悪性腫瘍だったとき、レーザーで刺激をしてしまうと転移や増殖をする可能性があるから。
といっても、「ホクロを取る前にダーモスコピー検査を受けてないよ!」という人がめちゃくちゃ多いのも事実。
それに、次の項目で説明しますが、日本人は皮膚ガンになりにくい人種なんです。
ブログで発信している以上、「正直、検査受けなくてもホクロ取っていいと思うよ」と大声で言えないのつらいところ(言ってる)。
なのですが、正直心配しすぎる必要はないかな?という感じです。
ですが、最後は自己責任でお願いします・・・。
日本の皮膚がん罹患率はとても低いという事実
ここまで読んでくださったあなたは、
「やっぱり私は皮膚がんにかかっているんじゃないか」
「私はほくろが多いから、どれか一つは悪性化しちゃってるかも…」
と、心配されているかもしれませんね。
ただ覚えておいていただきたいのは、日本は、世界でもっとも皮膚がんになりにくい国ということです。
(引用:紫外線環境保健マニュアル2008/環境省)
少し前のデータですが、1999年時点では、男女ともに10万人に3~5人という罹患率。
罹患率が低いからといって、「あなたが絶対に皮膚がんではない」とは言い切れませんんし、「絶対に皮膚がんにならない」訳でもありません。
ですが、「こっちのホクロもガンかも。気になって夜も眠れない」というように、過剰に心配する必要はありません。
ただ、何度も同じことを言ってしまい申し訳ないのですが、「さいきん、色、形、サイズが変わったホクロ」は注意してみておくようにしてくださいね。
子供も皮膚がん(メラノーマ)になる?
子供がメラノーマになることは、すごく珍しいことです。
日本皮膚悪性腫瘍学会が出している「小児悪性黒色腫」という論文では、「日本でメラノーマを発症した例は、1993年時点までで29件」としています。
1993年以降に、子供のメラノーマの発生件数が増えたというデータはありませんので、その後もほとんど増えていないと考えられます。
子供の悪性黒色腫はとてもまれですが、まったくない訳ではありません。
もしお子さんにほくろがあったら、「ABCDEの法則」に当てはまっていないか、定期的に確認してあげてください。
子どものメラノーマ(小児メラノーマ)について詳しく知りたい方は、さきほど紹介した論文「小児悪性黒色腫」をご覧ください。
皮膚がん(メラノーマ)ができる原因
肺がんや腎臓がんなどの「がん」の原因もはっきりとは分かっていないように、メラノーマができるハッキリとした原因も分かっていません。
しかし、
- 外部からの慢性的な刺激
- 紫外線
が関係していると考えられています。
外部からの慢性的な刺激
日本人は、紫外線を浴びにくい「足の裏」や「手足の爪」などにメラノーマができやすいことから、「慢性的な刺激」が原因のひとつだと考えられています。
ただ、「どれくらいの刺激を、どれだけ受けたらガン化するのか?など、詳しいことはまだまだ分かっていません。
ガンについては研究途中のことも多いので、これから解明されるかもしれませんね。
紫外線
紫外線も、メラノーマができる原因のひとつだと考えられています。
しかし、人種によって紫外線の影響力が変わることも分かっています。
皮膚悪性腫瘍ガイドラインによると、黄色人種である私たち日本人にとって、「紫外線の関与は少ないと考えられる」と発表されています。
しかし、白色人種(白人)は、「紫外線にとても弱く、メラノーマがもっともできやすい人種」で知られています。
白色人種は、メラニンを作り出す細胞の「メラノサイト」の数が日本人よりも少なめ。
紫外線から細胞を守ってくれるメラニンをあまり作れないから、紫外線の影響をモロに受けやすいんだそうです。
日本人はたしかに紫外線の影響を受けにくいものの、「紫外線を浴びても絶対にメラノーマにならない」という根拠はありません。
あくまで「影響は受けにくい」というだけなので、油断はしすぎないようにしましょう。
皮膚がん(メラノーマ)を予防する方法
慢性的な刺激を避ける
といっても、「足の裏に刺激を与えたくないから歩かない!」「爪への刺激を避けたいからパソコンを触らない!」なんてことはできませんよね(笑)。
日常生活で受ける刺激はどうしようもないので、気を付けすぎる必要はありません。
しかし、
- ホクロをつまようじで取ろうとする
- ホクロをむやみやたらに触る
のように、自ら刺激を与えないようにしてください。
「メラノーマとは」でも説明しましたが、メラノーマの原因のひとつは「ほくろの細胞が変化すること」にあります。
でき初めは「ただのホクロ」であっても、何度も刺激を与えているうちに「メラノーマに変わってしまう」ということもあり得てしまいます。
紫外線対策をする
UVA・UVBのどちらも防ぐことができる日焼け止めを使うことで、「メラノーマ自体の発生率は下げられないものの、メラノーマのもとである母斑細胞の発生率は下がる」ということが分かっています。
しかし、「日焼け止めに関するさまざまな研究」を一つにとりまとめた有名な論文(*1)では、「紫外線を予防することにより悪性腫瘍の発生率が減少するという根拠はない」と発表しています。
このことから、「紫外線予防をしてもメラノーマの予防にそこまで意味はないんだよね。でも日焼けをするメリットはないからしっかり日焼け対策しよう!」
というような内容が、皮膚科の公式ホームページやお医者さんのブログで書かれていることが多くあります。
実際に私もよく見かけます(´・ω・`)。
しかし、日焼け止めとメラノーマの研究が進んでいった結果、「UVA・UVBどちらも予防できる日焼け止めを使用すれば、メラノーマの発生リスクのもとである母斑細胞の発生が30~40%減少する」(*2)という事実が判明しました。
紫外線対策をすることで直接的にメラノーマが予防できる訳ではありませんが、メラノーマのもとである細胞ができるのは予防することができます。
少しでもメラノーマを防ぐために、日焼け止めを塗る、帽子をかぶる、長そでを着る(羽織る)などをして、積極的に日焼け対策をするようにしてくださいね。
その他の皮膚がん
皮膚がんには、ここで説明した「メラノーマ」以外にも、
- 有棘(ゆうきょく)細胞がん
- 基底(きてい)細胞がん
があります。
メラノーマ(ほくろのがん)とは少し異なりますが、こちらも簡単に説明させていただきます。
基底細胞がん(きていさいぼうがん)
皮膚は「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層になっているのですが、この「基底層」にある細胞や、毛を包んでいる「毛包(もうほう)」という部分の細胞が悪性化したものです。
日の当たりやすい「頭」「顔」「鼻のまわり」「上下まぶた」「上唇のまわり」にできやすいことから、紫外線が主な原因だとされています。
初期には、盛り上がったホクロのようなできもの(おでき)ができ、進行するとともにサイズが大きくなります。
有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)
皮膚の「有棘(ゆうきょく)層」にある細胞が悪性化する皮膚がんのこと。
紫外線が原因だとされていて、日の当たりやすい「顔」「首」「手の甲」などにできやすいです。
高齢化するにつれ、かかりやすくなることでも知られています。
参考文献
*1)Dennis LK, Beane Freeman LE, VanBeek MJ: Sunscreen use and the risk for melanoma: a quantitative review, Ann Intern Med, 2003; 139: 966-978.)
*2)(Gallagher RP, Rivers JK, Lee TK, et al: Broad-spectrum sunscreen use and the development of new nevi in white children: a randomized controlled trial, JAMA, 2000; 283: 2955-2960.)